賃貸併用住宅を建てた記録
福岡市南区・自宅+貸室3戸
賃貸併用住宅

【賃貸併用住宅】「やめとけ」は本当か。単年収支は35年間ずっとマイナスでした

2026年9月12日 福岡市南区 35年収支シミュレーション 事業計画
事業計画の単年収支を、35年ぶん下まで見ました。プラスの数字が1つも出てきません。
黒字に変わるのは36年目。アパートローンが終わる年です。

「賃貸併用住宅 やめとけ」で挙げられている理由のうち、手元の数字で確かめられるものが5つありました。
1つずつ突き合わせます。
目次
  1. ① 初期費用が高い — 貸室3戸+住居1室で 約1億3,800万円
  2. ② 自宅の設計が制限される — 自宅は97.34㎡取れた
  3. ③ 入居者の確保が難しい — 入居率100%で組まれていた
  4. ④ ローンの負担が重い — 35年間ずっとマイナスだった
  5. ⑤ 売却しにくい — 借入が評価額を下回るのは19年目
  6. 5つを並べ直す
  7. この数字は全部、契約前に手元にあった
前提福岡市南区、自宅1戸+貸室3戸の賃貸併用住宅。軽量鉄骨造2階建、延床339.57㎡。
数字はすべて、契約前に受け取った事業計画から拾いました。実績ではなく計画値で、金額は丸めています。
単年収支の表は60年目まで続きますが、この記事ではアパートローンが終わる35年目までを中心に見ます。
総事業費の内訳は別の記事に全部書きました。

① 初期費用が高い — 貸室3戸+住居1室で 約1億3,800万円

これはそのとおりでした。

項目金額
建物 自宅部分約4,600万円
建物 賃貸部分約5,900万円
工事関係費ほか小計(税込)約1億3,300万円
諸費用約460万円
事業予算 合計約1億3,800万円

建物代が自宅と賃貸で分かれます。自宅部分だけなら4,600万円。貸室3戸を足すために、建物だけで5,900万円が乗りました。

「初期費用が高い」と言われているのは、要するにこの5,900万円のことです。

そして諸費用の中身も普通の家とは変わります。うちは460万円のうち140万円が工事中金利でした。まだ引き渡されていない建物への利息です。ここは前の記事に書いたので繰り返しません。銀行からのローン無しで建てる場合は不要です。

② 自宅の設計が制限される — 自宅は97.34㎡取れた

「自宅が狭くなった」という後悔をよく見かけます。私の場合、狭くなったのは自宅ではありませんでした。

用途間取り専有面積
自宅3LDK97.34㎡
貸室①1LDK50.42㎡
貸室②2LDK66.81㎡
貸室③3LDK91.25㎡

敷地437.31㎡に容積率80%がかかるので、建てられる延床の上限は349.85㎡。実際に建てたのが339.57㎡です。

ここから自宅の97.34㎡を引くと242.23㎡。ただしこの中には階段や廊下が入ります。貸室の専有面積になったのは208.48㎡で、差の33.75㎡が共用部分です。

自宅を小さくすれば4戸入る計算でしたが、そうしていません。理由は前の記事に書きました。

制限は確かにありました。ただ効いてきたのは、自宅の広さより貸室の戸数です。

③ 入居者の確保が難しい — 入居率100%で組まれていた

私が読み直していちばん長く止まったのは、ここです。

管理は一括借上にしました。一括借上とは、ハウスメーカーに貸すことで、たとえ入居がなくとも賃料をもらえます。代わりに賃料の10%は手数料として支払います(借上料率90%)。
この事業計画は、入居率100%で組まれています。一括借上なので、そうなります。

そのかわり、募集賃料が5年ごとに下がる想定が入っていました。

年賃料収入(年額・借上90%後)1年目比
1〜14年目434万円100%
15〜19年目425万円98%
20〜24年目417万円96%
25〜29年目408万円94%
30年目〜399万円92%

35年目の賃料は1年目の92%。年35万円下がります。

この計画に、空室という行はありません。
かわりに借上料を毎年48万円払って、賃料が5年ごとに下がる形で入っています。空室リスクは消えていません。表の別の場所に移してあります。

2%ずつという下げ幅が妥当なのかは、正直まだ判断できません。

④ ローンの負担が重い — 35年間ずっとマイナスだった

ローンが住宅ローンとアパートローンの2本になる話は前の記事に書きました。合わせて月40.6万円です。

ここではその先を書きます。単年収支が35年でどう動くのか。

年目単年収支月あたり
1年目▲84万円約7.0万円
6年目▲138万円約11.5万円
15年目▲97万円約8.0万円
21年目▲150万円約12.5万円
31年目▲154万円約12.8万円
35年目▲113万円約9.4万円
36年目+194万円—

35年間、単年収支はずっとマイナスです。

35年ぶん並ぶと、さすがに重く感じます。

単年収支がマイナスの期間
35年
計画値。1〜35年目
黒字に変わる年
36年目
計画値。アパートローン完済の翌年
月あたりの持ち出し(最大)
約12.8万円
31年目

数字が跳ねる年があります。6年目、11年目、16年目、21年目、26年目、31年目。
火災・地震保険料41.2万円が5年ごとに乗る年です。21年目はそこに金利の段階上昇と設備メンテ費の値上がりが重なっています。

36年目に黒字へ変わるのは、返済期間35年のアパートローンが終わるからです。住宅ローンの返済が終わるのは47年目なので、そこからまだ11年続きます。

地味に効いてくるものもありました。設備メンテナンスの費用です。

年年額
1〜10年目12.3万円
11〜20年目16.5万円
21年目〜20.6万円

建物が古くなるほど上がる前提で組まれています。
なお修繕積立金の行は、どこにもありませんでした。大規模修繕をやるなら、上の表の外側から出すことになります。

「ローンの負担が重い」という指摘は、月々の返済額の話として書かれていることが多いです。私にとって重かったのは、35年ぶん下向きに並んだ列のほうでした。

⑤ 売却しにくい — 借入が評価額を下回るのは19年目

事業計画に「推定資産評価」という欄がありました。

区分評価額根拠
家屋約3,905万円評価額単価115,000円
土地約4,447万円路線価101,700円/㎡ × 437.31㎡
合計約8,352万円

これと借入残高を並べてみました。

年度末借入残高
1年目約1億3,355万円
15年目約9,447万円
19年目約8,140万円
30年目約3,951万円
35年目約1,696万円

評価額8,352万円を借入残高が下回るのは、19年目でした。

ただし、ここには大きな但し書きが要ります。この評価額は売値ではありません。
路線価も固定資産税評価額も、税金を計算するための物差しです。

同じ土地が、路線価の物差しで4,447万円、相続税路線価の物差しで5,466万円になります。1,000万円の差が出ます。
19年目という数字も、どの単価で計算するかで前後します。

賃貸併用住宅は自宅でもあり収益物件でもあるので、買い手も居住用と投資用に分かれます。どちらの物差しで値がつくのかは、売りに出してみないと分かりません。

5つを並べ直す

言われている理由私の場合はどうだったか
① 初期費用が高いそのとおり。賃貸部分の建物だけで5,900万円
② 自宅の設計が制限される自宅は97.34㎡取れた。効いたのは貸室の戸数
③ 入居者の確保が難しい入居率100%前提。かわりに賃料が5年ごとに下がる想定
④ ローンの負担が重いそのとおり。単年収支は35年間ずっとマイナス
⑤ 売却しにくい借入が評価額を下回るのは19年目。ただし評価額は売値ではない

5つのうち、はっきり「そのとおり」と言えたのは①と④でした。②と③は指摘の方向こそ合っていましたが、出てくる形が違いました。⑤は確かめきれていません。

この数字は全部、契約前に手元にあった

この記事に書いた数字は、どれも契約前に渡された書類に載っていました。私が読めていなかっただけです。

単年収支の表は60年目まで続きます。35年ぶんだけ見ても、プラスの行は1つもありません。
それを見たうえで建てた理由は別の記事に書きました。なぜいちばん高い積水ハウスにしたのかはこちらです。

まだ最初の1年も終わっていません。36年目にこの表をどう思っているかは、そのとき書きます。

数字は契約前に受け取った事業計画の想定値で、運用実績ではありません。金額は丸めています。金利・賃料・税制はいずれも作成時点の想定で、実際の結果は変わります。入居状況は執筆時点のもので、今後の稼働を保証するものではありません。物件が特定される情報と、取引先の担当者の個人情報は載せていません。特定の商品や会社を勧めるものでも、投資助言でもありません。建築・融資・税務の判断は、必ず自分で専門家に確認してください。
書いている人
福岡市南区で賃貸併用住宅(自宅+貸室3戸)を建てて所有している個人です。 建てるまでに調べても出てこなかったこと、実際に動いた金額、あとから気づいたことを記録しています。 物件が特定される情報と、取引先の担当者の個人情報は載せていません。